2019年04月17日

Category インタビュー

役者であることを大事に生きたい

女優
有森也実さん

 

 テレビドラマ『東京ラブストーリー』でブレークした。その後も映画、テレビ、舞台で活躍。更年期を迎えてフラメンコを始めた。踊っているときが一番の幸せ。母や父を見送り、21年一緒にいた愛猫も亡くなった。今から新しい出発だと言う。

 母に胃がんが見つかり、最期は自宅で看た。痛みがすごいのでモルヒネの量を増やすともうろうとしてくる。減らすと痛くて眠れない。自分の指や手をかむ。布団に血がついた。壮絶だった。

 

 母の最期の言葉が「也実はほんとに美人だね」です。ええ? そういうことじゃないでしょう。もう少し別の言葉はないのと思いました。母は私よりも女優さんみたいな人で、ヘルパーさんが来て、車椅子に座って、何をしたかというと、自分の化粧品がどこにあるのか探してほしいと、私のいないときに探し回ったというんです。もうすぐ亡くなるかもしれないという人が化粧品じゃないでしょう。もっと他に大事なこと、私に伝えておかなければいけないことがいっぱいあったんじゃないかと思うんです。

 2年後、父が亡くなる前に私と最期に話したことは、「太っちゃ駄目だよ」という言葉でした。ずっと離れて暮らしていた父は、「美しい一年であることを願っています」と必ず年賀のあいさつを送ってくれました。几帳面で美しい文字の年賀状…私は無造作でさりげないことに惹かれるタイプでしたので、美しさということには少し無頓着なところがありました。二人が亡くなってから、美しさを感じるとか、美しいことを意識するということは豊かなことなんだと思える様になりました。お月さまとかお花が美しいと思えることにありがたいと。父と母の美しさに対するこだわりというものを、私はもっと感じるべきだったのになと思います。

 

これからの人生をどうしようかと思っていたときに舞台の仕事が舞い込んだ。

 

 これはまだやり残していることがあるというメッセージではないかと思ったんです。井上ひさしさんが亡くなって10年。その記念公演が1年間ありまして、そのラインアップに『化粧二題』が入っていて、1幕が大衆演劇の女座長の一人芝居、2幕が内野聖陽さん演じる大衆演劇の座長の一人芝居という、二人で一つの芝居をつくるという舞台です。それをやらせていただくことになりました。一人芝居は今回初めて経験するんですけど、私は役がないと人前に立つことができない。だから役者であることを大事にして生きていきたいなと思います。6月、7月が本番の舞台です。

 今までは、自分でいろいろ決めて生きてきたと思っていたけれども、父、母が亡くなってから、私は生かされて生きているのではないかと感じるようになりました。ジゼル(愛猫)も亡くなりました。21歳と8か月。人間でいったら120歳を越える長寿です。「ひとりで大丈夫だね」と私に言って去っていったような気がします。

 

Information

 

 

こまつ座「化粧二題」
大衆演劇の女座長・五月洋子役
2019年6月3日~16日まで東京公演、
その後全国公演。

 

 

 

 

ありもり・なりみ 1967年、横浜市生まれ。中学3年生のときにファッション雑誌の属モデルとなり、芸能界デビュー。86年、『星空のむこうの国』にヒロイン役で映画デビュー。『キネマの天地』で、ブルーリボン賞新人賞、アカデミー賞新人俳優賞を受賞。テレビドラマ『東京ラブストーリー』で大ブレーク。森光子主演の『放浪記』などで舞台女優も。映画『いぬむこいり』に主演。テレビ『NHK短歌』では司会も務めている。

 

撮影:児玉成一

最新記事
関連記事

記事一覧を見る

カテゴリ一覧
タグ一覧
  • twitter
  • Facebook
  • Line
  • はてなブックマーク
  • Pocket