言葉に出会い、ハッとさせられた経験を皆さんはお持ちでしょうか。
見えていなかったことが見えた時の驚きや喜び。何か大切なものを発見したような嬉しさがあります。
2500年前の言葉として伝わるお経も同じです。私たちに新しい発見をたくさん与えてくれます。
言葉との出会いは私との出会いです。
自分も他者も見えていないのに見えているつもりで生きている悲しい姿、そして悲しい姿であることにも気づかない自分との出会いなのです。
それが人としての本当の誕生です。
だから「言葉に出会い、人は生まれる」のです。
悩みながらも歩む 住職自身のエピソード
「言葉に出会い、人は生まれる」
自身の体験を交えた短編法話。
2023年は、50年に1度の大法要が京都・東本願寺で勤まります
新しい生き方のはじまり
戦乱の世、飢饉の多発、疫病の流行など、激動ともいわれる時代を生きられた親鸞聖人。
悩み、もがき、苦しみを抱える中、一人の仏者である法然上人と出遇(であ)われました。そしてそこに導かれた「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」という生き方を、生涯のよりどころとして、生き抜いていかれたのです。
「雑行(ぞうぎょう)を棄てて本願に帰す」
法然上人との出遇いを、後に親鸞聖人は主著である『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』に、このように綴りました。親鸞聖人にとって、人としての真の「誕生」を意味する言葉であったに違いありません。
親鸞は「人として生まれてきたことの意味」を、“南無阿弥陀仏”という言葉に出遇い教えられました。
そしてその教えが自身の内側に開かれ、それが宗(むね/よりどころ)となって、新たに仏者として、人として生きていかれたのです。そこに「新しい生き方のはじまり」が、あらゆる人の上に「仏道」として開かれたのです。
「言葉に出会い、人は生まれる。」、それを「立教開宗(りっきょうかいしゅう)」といいます。
イラストについて
冒頭のイラストは、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人とその妻・恵信尼公、
そして、親鸞の主著である『教行信証』に記されている「正信偈(しょうしんげ)」の言葉を描きました。
今回の法要名にもなっている「立教開宗」とは、親鸞が『教行信証』(草稿本)を完成させたことに基づくと聞きましたので、
当時の年齢である50代の親鸞聖人をイメージしています。
また親鸞聖人は、当時ではあり得なかった妻帯の在家生活を送られた僧侶であり、
このことは浄土真宗にとって極めて大切なことであると感じ、妻である恵信尼公を一緒に描くことにしました。
人と出会い、お念仏の教え、その言葉を有縁の方々と共にいただいていかれた親鸞聖人。
その感動をうたった「正信偈」から、新たな命が芽吹き、一輪の花が咲く。そして咲き誇る存在の輝き。
そんなストーリーを2枚のイラストで表現しました。[田所 一紘]
2000年、第3回エネルギー賞展最優秀賞など多数受賞。現在、東京展美術協会事務局長。
CAF.N会員。横浜歯科医療専門学校講師。真宗大谷派長願寺(神奈川県)門徒。