お布施の金額に決まりはありません。
布施の語源をたずねてみますと、古代インドの言葉でダーナといい、慈悲の心をもつて施すこと(喜捨(きしゃ))を意味しています。そして、仏教では、布施を次の3種に分けています。
①法施(ほうせ)(仏さまの教えを説き開かしめること)
②財施(ざいせ)(衣食などを施すこと)
③無畏施(むいせ)(畏れのない安心を施すこと)
お寺に差しあげる御布施は、この財施にあたります。
日ごろの私たちは、品物やサービスの対価を支払う(売買)という経済感覚で物事を計ってしまいます。御布施に関して、「いくらお包みしたらよいのですか」という質間をよく受けますが、この感覚も同じように思えます。
そしてこの感覚は、仏教が伝えてきた人間のいのちそのものにも値段をつけてしまうことになるのです。本来、人間の尊いいのちには値段をつけられるものではありませんし、ましてや、他人にも決められるものではないのです。
尊いいのちにあい得た法施の喜びは、喜んで捨てるという財施の心を生みます。
ですから、大切な人を亡くしたご縁に差し上げる御布施は、亡き人への、そして仏さまへの精一杯の御恩報謝(ほうしゃ)の気持ちを表すものなのです。