2021年12月09日
Category サンガコラム
元IS 兵が捕らえられている刑務所でインタビューを行った(本文とは別の男性)。
2011年3月シリア、独裁政権の圧政に反対するデモを繰り返す市民たちに、ついに政府軍が暴力での鎮圧に踏み切った。その後の混乱に乗じ、政府軍、反政府軍に加え、周辺諸国や大国の思惑が複雑に絡み合い、いくつもの武装勢力が支配地域を争う泥沼の戦争へと突入。中でも異質な存在感をはなっていたのがIS(いわゆる武装勢力〝イスラム国〞)だった。
ISはその残忍な処刑や過激な行動で、急激に支配地域を拡大していった。現在は勢いを潜めているISだが、なぜ彼らはそのような狂気に走ったのか。「人々を救いたかったんだ」と、チュニジアからISに参加した元兵士は語る。シリア政府に虐げられる人々を救うためには、銃を手に取るしかないと思ったという。しかし、その後、一緒にISに参加した友人たちはみな戦死し、今はその決断を後悔しているという。もし当時、彼の目の前に、銃を手に取る以外の選択肢があったなら、違った未来を生きていただろうか。
佐藤 慧( フォトジャーナリスト/ライター)
1982年岩手県生まれ。NPO法人Dialogue for P e ople(ダイアローグフォーピープル/D4P)所属フォトジャーナリスト、ライター。
同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍-人種-宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第二回児童文芸ノンフィクション文学賞など受賞。東京都在住。