2024年11月13日
Category サンガコラム終活
65歳以上の孤独死(孤立死)が年々増えていると報じられた(朝日新聞2024・5・14)。年間6万8千人。今後さらに増加する。政府も本気のよう。その翌日、週刊誌の記者から「どういう対策が考えられるか、現場の医師からの意見を」と問われた。
質問の一つは、「死後何日も経(た)って発見され、周囲に迷惑がかかるケースの増加に、対応策はないでしょうか(要旨)」だった。なかなかの難問だ。大家族社会、村落共同体社会が健在のころ、人は人と共に暮らし(家畜とも)、窓は開き、否応(いやおう)なく家族や社会との関わりがあり、家族と個人、社会と個人との通路を持ちながら暮らしていた。ここ50年で大きく変わった。社会は都市化へと転じ、家には子ども一人一人の個室があり、町にはアパートやマンションが増え、隣家とは壁で遮断され、屋根もコンクリートで固められ、人は社会との通路を減らした。
「社会との通路を増やすことです」と答えた。「どうやって?」「週3回、65歳以上の独居人には牛乳会社が無料配達し、飲んでなかったら民生委員に連絡」、これはいいと次の考えも浮かぶ。「新聞配達人も昨日のを取ってなかったら連絡」と言った時、週刊誌の記者が言った。「最近、新聞読まない人増えて、皆ネットですから」。そうかあ。でも、孤立死防ごうと日本中で独身高齢者宅に監視カメラ設置して、「防孤独死安全協会」に毎日画像が送られるのも不気味だ。この問題、行政、福祉関係者、訪問看護師、介護士、ヘルパー、宅配業者、移動スーパー「とくし丸」、「SECOM」、お寺さん、皆が知恵を出さねばなるまい。老人食堂もあちこちに。
話は飛んで、孤立死が抱える問題の一つに、誰が死亡診断書を書くか、もある。かかりつけ医を持ち、そこを社会との通路としておくと、先ほどの面々との関わりも生まれる。かかりつけ医を通路とすると死亡時、死亡診断書を書いてもらいやすくなる。カルテに病名がある。すると「検視」(警察が来て大事となる)が減る。検視をどう減らしていけるかを考えることは、孤立死を減らすことに通じていく。
徳永 進 (医師)
1948年鳥取県生まれ。京都大学医学部卒業。鳥取赤十字病院内科部長を経て、01年、鳥取市内にホスピスケアを行う「野の花診療所」を開設。82年『死の中の笑み』で講談社ノンフィクション賞、92年、地域医療への貢献を認められ第1回若月賞を受賞。著書に、『老いるもよし』『死の文化を豊かに』『「いのち」の現場でとまどう』『看取るあなたへ』(共著)など多数。