小窓に明かりを灯すのは|サンガコラム「小窓のあかり」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2020年06月10日

Category サンガコラム

小窓に明かりを灯すのは

小窓のあかりVol.22

 「この世の万物は移り変わりゆく。だからこそ日々精進しなさい」とお釈迦様はこの世の真理を言われた。

 コロナウイルスで休校の間、わが家の子ども達と朝の読経を本堂ですることにした。決まった時間に決まった場所で決まったお勤め(お経を読むこと)をする。初めは、久しぶりに変化のある朝に、ちょっとわくわくしながら大きい声で読経していた子ども達も、一週間もすればだれてくる。ぼーっとしていたりふざけたり…。

 だが、日常の中にも変化があった。子どもが階段を鼻歌まじりで上って行く時に聞こえてきたのは…。「こっ、これは!!」。毎朝読経していたお経の言葉だった。お風呂から聞こえてくる歌声も、出かけようと靴をはきながらでも。家の中では、子どもの歌声のようなお経で満たされていく。子どもの吸収力、楽しもうとする心は素晴らしい。

 外出自粛で先の見えない繰り返しの日々の中でも、目に見えたり、手に触れたり、耳で聞こえたりする目の前の今を大切に受け取れれば、自分の立っている場所も不安でいっぱいにはならない。なぜなら、自然と口をついて出てくる子どもの歌うようなお経の声には、今を生きている喜びを感じるから。

 その喜びは、お経だから特別というのではない。夜寝て、朝起きて、ご飯を食べ、家族や友達と語り合う、そんな当たり前のようで当たり前でない、全てが移り変わりゆく掛け替えのない日々の営みが、世界中の小窓に明りを灯すのだ。

島津 和嘉子(新潟県・長養寺)

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