2019年10月21日

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誰もが出かけやすい世の中に

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通勤電車がつらくなった。そう感じていた朝、いつものように東京・高田馬場駅で私鉄を降りJR山手線のホームに出ると、視覚障害の青年が駅員の右肘を借りて歩くのに出会った。仕事へ行くのだろう。やがて私の乗る電車が来てホームドアが開くと、今度は車椅子の男性が駅員のサポートで乗り込むのが見えた。「つらいなんて、言っていられないな」

いま盲導犬育成・無償貸与の公益財団で働いていて、いきおい障害者福祉の問題にも触れる。いつものことだが、いかに自分が無知か、突き付けられる日々だ。

とりわけ「障害者観」の変化に気持ちを揺さぶられた。障害とは個人の心身機能に起因するとしか思っていなかったが、2006年に国連で採択された障害者権利条約では、機能障害のある人を考慮しないでつくられた社会の仕組みに原因があると言っていた。社会参加を阻む障壁が障害の原因―― 障害の「社会モデル」という考え方だそうだ。

コンサートホールにエレベーターがなければ車椅子の人は困る。盲導犬を連れた視覚障害者が飲食店で断られたら、盲導犬同伴の行動が制限されてしまう。

世の中の生活空間は往々にして多数派の発想で出来ている。駅改札のタッチ面が右側にあるのは、右利きが9割ということと無縁ではないだろう。「社会モデル」は私にバリア(障壁)をなくせと迫ってくる。

で、朝の高田馬場駅。障害者や高齢者、ベビーカーを押す人に気づいたら「何かお手伝いできますか」と声をかけよう。ささやかな周囲への気配り。そんなことを考えながら山手線に乗ると、車内はスマホだらけだった。

井上 憲司 (元社会部記者)

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