「生」「老病死」 | 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2019年02月14日

Category サンガコラム終活

「生」「老病死」

老いるについて―野の花診療所の窓から  Vo.45

 人の苦しみを、四個焼きのタコ焼き鉄板のように、「生老病死」という型にはめ込むって、何か違和感があった。「老病死」さえも「苦」として済ましていいのか、という思いもあるが、そのことはひとまず置くとして、「生」についてのことである。

 「生まれる」にしても「生きる」にしても楽しみや喜びである部分も大き
い。何しろ、「ハッピーバースデートゥユー!」なのだし、ランドセルしょって、希望に満ちて未来へと「生きる」んだし。四語の中で一対三の分極
化が生じていると感じた。

 例えば、往診に通っていた96才のNさんの話である。気品あるおじいさん。たばこ病の慢性肺気腫。年々息切れ進み、紙オムツの使用も始まった。超高齢社会の一断面。聞くと、Nさんの奥さんは17年前、胃がんで他界。息子夫婦と孫二人、の合計5人で暮らしていたが、妻他界の翌年、息子のお嫁さんが乳がんで亡くなった。そのころは歩行が可能で何とかスーパーへ買い物に行き、孫を育てながらの苦労な日々。5年後、息子さん再婚でき一息。

 その息子さんが去年、膵がんで亡くなる。Nさん、路頭に迷う。老化は急速に進んだ。食事量の減少、さらなる体重の減少、筋肉量減少。寝返り至難、時々の熱発。ぼくの診療所に入院した。点滴を一本した。「ありがとう」と、柔和な顔。

 思ってみた、Nさんの後半の人生を。妻と、お嫁さんと息子、計3人の「病」と「死」に出遭わねばならなかった。「生」あるゆえ立ち会う苦しみ、悲しみ、がある。考えてみれば、いろんな事件も事故も、災害も戦争も、いじめや虐待も、「生」…

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