2024年11月13日
Category サンガコラム
「ぼーっとする大会」をご存知だろうか。ルールはいたってシンプル。制限時間90分の中で、とにかくぼーっと何もしないこと。雑談やスマホはNG。時計を気にするだけでイエローカード。居眠りは一発退場だ。みんな一番リラックスできる格好で集まって、芝生の上で何もしない時間をただ過ごすのである。この不思議な大会は10年前、日本以上に競争の激しい韓国社会で生まれた。今では世界6か国に広まり、昨年は日本でも初めて開催された。コンセプトは「何かをしていないと不安な現代人に、何もしていない時間は本当に無駄なのか、問いかける」。とても面白い発想だと思う。
学校から帰宅した長女に「早めに宿題を済ませておけば、たくさん遊べるよ」とアドバイスをする。30分経(た)ち、そろそろ終わった頃かと様子を見に行くと、ドタドタと床を蹴る音が聞こえてきた。見ると長女が汗だくになって壁に向かって逆立ちの練習をしていた。もちろん宿題は1ページも進んでいなかった。本当に子どもの生活は、大人から見ると無駄だらけ。でも不思議なことに、時々そんな姿がやけに眩(まぶ)しく見えてくる。
児童文学の名著『モモ』の作者、ミヒャエル・エンデは「時間とは生きることそのもの」と言った。時間は、お金のように、貯(た)めたり交換したりできるようなものではない。大人たちは賢ぶって、未来のために「いま」を必死に節約しようとしてばかり。でも本当は「いま」という時は、この瞬間だけ。この「いま」しかないのだ。子どもはそれをよく知っているのかもしれない。「いまを生きる」。まったく大人にとっては何と難しい宿題なのだろう。
花園 一実
1982年生まれ。圓照寺住職。二児の父親。
『帰り道で話そうよ-マンガで味わうブッダの教え』(東本願寺出版)の原案を担当。