境界線を越えた人権を|サンガコラム「レンズの奥の瞳」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2022年10月05日

Category サンガコラム

境界線を越えた人権を

レンズの奥の瞳 vol.12

5人の子どもたちと共に、灼熱の国内避難民キャンプに暮らすヒーバさん。

 この6月、世界がウクライナ危機へと注目する中、シリアへ渡航した。シリア政府による民衆の弾圧やIS(いわゆる武装勢力「イスラム国」)の勃興など、この地域は長年にわたり戦禍が絶えたことがない。2015年にはシリアから逃れた人々が大挙してヨーロッパを目指し、「欧州難民危機」と呼ばれたが、いまだに故郷を追われる人々は増え続けている。コロナ禍前、シリア北東部のとある国内避難民キャンプを訪れた。北に国境を接するトルコの軍事侵攻により、20万人以上が避難民となり、行き場のない人々は荒野のテント生活を余儀なくされた。そのキャンプを今回2年半ぶりに訪れると、あまりの惨状に言葉を失った。ウクライナ危機を優先する国際人道支援団体が撤退してしまい、日々の飲料水にすらこと欠く状況だったのだ。「人権って何なのでしょう。私たちの命は、ほかの誰かの命よりも価値のないものなのでしょうか」。国境や人種、宗教や性別を越えた普遍的な「人権」に基づく世界は、未だ道半ばだ。

 

2年にわたってご執筆いただきました本コラムは、今号をもって全12回の連載が終了となります。
ご愛読ありがとうございました。

 

佐藤 慧( フォトジャーナリスト/ライター)

1982年岩手県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト、ライター。同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第二回児童文芸ノンフィクション文学賞など受賞。東京都在住。

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