2020年08月28日
Category 法話
お寺や仏像に興味あるけど、仏教の考え方となるとなぁ。宗教ってなんか近寄りがたいような感じがするけど。仏教徒!?と言われると困るけど、でも墓参りをしているし…こんなことを思ったことはありませんか?
知らなくても生活には困らないけど、その教えが人々を支え、2500年以上確かに伝えてられてきた仏教。身近に感じる仏教のギモンから「そもそも仏教とは何か」を考える超入門講座「人生にイキる仏教ー大人の寺子屋講座」。
この抄録は第3回「お釈迦さまは何を覚ったの?―「不安」と仏教―」の抄録③です。
また仏教には四諦八正道という教えがあります。まず、四諦とは、「諦」は真理という意味で、四つの真理「苦諦、集諦、滅諦、道諦」に従って歩みなさいと教えます。「苦諦」は人生は苦であるという真理、「集諦」は苦が生じる原因とは何かという真理、「滅諦」は苦が消滅された状態とは何かという真理、「道諦」は苦を滅した状態に至る修行とは何かという真理です。この四つの真理を認識しなさいということです。八正道は覚りに至る八つの正しい道のことです。
四諦を簡単に表現すれば、私たちの問題とは何か、その問題の原因は何か、問題がなくなった状態とは何かを考え、そして、そこまでに至る道とは何かということです。これは私たちの通常行っていることと同じです。仕事でも、勉強でも行っていることです。会社の業績が悪い時に、まず業績が悪いことを認識しなければ知らず知らず倒産してしまいます。それでまず問題があることを認識しなければなりません。そして、何が原因なのかを認識しなければいけません。営業が悪いのか、それとも経費が多すぎるのか。その原因を認識すれば、目標と達成方法を考えることができます。学問であれば、全体的に勉強の成績が悪いのであれば、それら全体の成績を上げます。英語だけの成績が悪いのであれば、英語を勉強しなければいけません。そのように私たちは問題を認識し、原因を考え、原因を解決して至るべき到達目標を決め、そして目標のために、どのように実行するか考えます。四諦はそのようなものです。
苦の消滅を求めるための方法は、非常にシンプルなものです。苦の原因は煩悩であり、苦の消滅は煩悩を滅した静かな境地に至ることであり、その境地に至るには、正しい生活、正しく物事を見る、正しく考える、正しい言葉を使う、正しい行いをする、正しい努力をする、正しい心の落ち着きをする、正しい精神統一をする、というものです。ただそのような四つの真理を覚り、仏に成る道を歩むということが難しい問題です。因縁であるということも、四諦八正道ということも知り、理解することもできますが、それを身につける、体得するということとはまったく異なります。そこが難しいですね。しかしここで教えられるのは、老病死であれ、生じて欲しくない未来であれ、そちらの問題の解決ではなく、苦の解決が先ほどの縁起であり、この四諦八正道の教えであるということです。
鶴見晃(つるみ・あきら)氏/同朋大学准教授
1971年静岡県生まれ。大谷大学大学院博士後期課程修了。真宗大谷派(東本願寺)教学研究所所員を経て、2020年4月より現職。共著、論文に『書いて学ぶ親鸞のことば 正信偈』『書いて学ぶ親鸞のことば 和讃』(東本願寺出版)、『教如上人と東本願寺創立―その歴史的意味について―』『親鸞の名のり「善信」坊号説をめぐって』『親鸞の名のり(続)「善信」への改名と「名の字」-』など多数。
写真/児玉成一