むちゃくちゃ豊かな世界|俳優 本多力さん 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2023年11月01日

Category インタビュー

むちゃくちゃ豊かな世界

俳優 本多力さん

京都・東本願寺の近くの真宗大谷派養蓮寺の三男坊に生まれた。演劇好きの母の影響もあって、演劇サークルに入った。兄たちに倣って得度(剃髪して仏門に入る)もしたが、京都で演劇三昧の生活。東京に出ても演劇三昧の生活。39 歳で結婚。ムロツヨシさんの所属する事務所に所属。

 本多さんに演劇への道のきっかけをつくってくれたのはお母さんだったようだ。一緒に舞台を見に連れていってくれた。

 母は大学の頃、演劇をやりたかったらしいんです。でも当時は「天井桟敷」や「紅テント」とかのアングラ演劇が盛んな頃でした。それで母のお父さん、僕のおじいちゃんですが、演劇=過激な反体制のものと思ったみたいで、演劇をやることは駄目だって言ったらしく、それで母は演劇ができなかったんです。

 年を取ってから、母は「京都ライトハウス」で、視覚障害者が本に触れ合えるように朗読を録音して、それをお渡しするというボランティアをやっていました。僕は男三兄弟の末っ子で、だから僕が大きくなるにつれて母の子育ての手も空いてくるので、一緒に舞台に連れていってくれたんです。「おやこ劇場」というようなものから「遊◎機械/全自動シアター」、「東京乾電池」、「加藤健一事務所」といった小劇場演劇を一緒に観に行きました。そこで演劇というものに触れました。

 高校生のとき、寺の法要で「蓮如上人物語」を新屋英子さんが一人芝居でやってくださいました。そのとき兄の知り合いで同志社大学の演劇サークルの方がお手伝いに来てくれて、そこで初めて学生演劇というものを知り、観に行くようになりました。初めて大学の演劇を観にいったときに、100人ぐらいの小さな小屋で、舞台と客席の距離が近く、エネルギーがダイレクトに伝わってくるのが衝撃的でした。

 演劇にしろ、ドラマや映画などの映像作品にしろ、おもしろいものをつくろうという一点に向かって大人が必死に一生懸命やっているというのがすごいことだと思いますし、その時間がとても豊かで、そこにこの仕事の魅力を感じています。

 舞台は、演者と観客が、同じ時間と空間を共有しているというのがおもしろいなあと思います。それから観客が舞台上のどこでも観ることができる、例えば台詞を喋っていない映像では恐らく画面に映っていないであろう役者を観ることができるのも魅力だと思います。自分が観劇するときはついついそういった所を観てしまいます。

 

 

 結婚して娘が誕生した。2歳半だという。結婚は無理だと思っていた母は「奥さんに感謝だよね。感謝と縁は大事にしなさい」と言って、大変喜んでくれた。

 僕も、まさか自分が結婚できると思っていなかったので、妻と出会って結婚して子どもが生まれてきてくれて、というのはたまに「あれ?これ夢じゃないよな?」「あ!良かった現実だ!!」ってなる瞬間があります。あとは生まれて六日目くらいに僕にすごく似ている日があったので、「似ないでください、どうか僕の顔に似ないでください、こっち来ないでください」ってお願いしたりしました。

 月並みな言い方ですけど、この子が希望を持って生きていける日本や世界になってほしいです。

 

 

 

<Profile>

本多 力( ほんだ・ちから)

 1979年、京都市出身。立命館大学に入学後、同志社大学内の演劇サークル「演劇集団Q」に加入。その後同志社小劇場内で活動していた「ヨーロッパ企画」に参加。
 近年の主な出演作に「ケイジとケンジ時々ハンジ」(テレビ朝日)、「おとなりに銀河」(NHK)、「大奥」(NHK)などがある。今後は「今日からヒットマン」(2023年10月 テレビ朝日)、「光る君へ」(24年NHK大河ドラマ)に出演予定。

【出演番組のお知らせ】
光る君へ
平安時代中期を舞台に、『源氏物語』を生み出した紫式部の人生を描く。きらびやかな平安貴族の世界と、懸命に生きて書いて愛した女性の一生に挑戦する大河ドラマ。2024年1月より、N H Kで放送予定。

 

 

写真・児玉成一

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