2019年02月14日
Category インタビュー
「秘密にしていたけれど」。高校1年のとき、たまたま手にしたトニ・モリスンの小説の冒頭の言葉に衝撃を受けた。白人が定めた価値観を痛烈に問いただす、ノーベル賞作家の鮮烈なデビュー作である。それが作家をめざした最初の一歩だったのかもしれない。
最新作『おまじない』では、日常のちょっとしたひとことによって人生が変わる瞬間を描いた。
言葉は、誰でも発することができるし、お金がかかるものでもありません。だけど、その言葉ひとつで目の前の景色や人生が変わる瞬間が、誰にでもあると思います。他の作品でもやってきたつもりでしたが、この作品では特に表現したかったんです。
この作品のなかには、おじさんが出てくる場面があります。いわゆる社会的な地位があるような方ではなく、ごく普通のおじさんです。そんなおじさんの言葉に元気づけられるということをすごく描いてみたかった。これが若くて見た目の麗しい男の子の言葉だったら、よくある価値観から全く出ていない。そうではなくて、全く違う価値観の人からの一言で世界の広さを知るということ、そういうマジカルな瞬間を今回の主人公である女子たちにも経験してほしかったんです。
母親になった。1歳半の男の子。もう十分に怪物である。両親が自分を自由に生きるように育ててくれたように、わが子へもエールを送る。
両親からは、個人としてすごく尊重されて育ててもらったと思います。おまえは自分から生んでくれと言ったわけではない。お父さんとお母さんが勝手に産んだ…