2019年04月19日
Category サンガコラム
タイムライン
「最近の日本の木造住宅の窓は、どんどん小さくなっています」
知り合いの建築家の言葉に驚いてしまった。中には窓のないものさえ少なくないという。高級な注文住宅や建て売り住宅まで含め、すべてがそうである由。
日本の木造建築はもともと複数の柱を立て、桁や梁で柱同士を結んで安定させ、その内部空間を利用するものだ。柱こそ不可欠だが、柱と柱の間の空間はそれをそのまま残そうと、戸や壁で塞いでしまおうと、基本的には自由である。(西洋の木造建築は、壁が構造体になるから、壁がないと建物自体ができあがらない。)
だから、日本家屋は開口部(窓)が大きく取られ、縁側を挟んで同じ一つの薫風が内と外を吹き抜けるのが普通だった。外部を無理に遮断せず、内と外が自由に相入する。そうした日本家屋の構造と日本人の融通無碍の精神とが無縁だったとは思われない。
その後、散歩の折に実際に確かめてみると、確かに新築現場で見られる最近の木造住宅の窓は先の建築家の言葉そのままで、極端に小さくなっている。
どうやら建物の「高気密」や「高断熱」が売り物のようで、要するに外部を遮断してしまうのが狙い。いきおい壁は(断熱材を含んで)厚く、窓はないか、できるだけ小さいのが理想になる。こうした内部の快適さのみを目指す新しい木造住宅は、今後日本人の感受性の変化にも深い影響を及ぼすものと思われる。そういえば刑務所や拘置所で収容者の最もつらいことの一つは、窓がなく、従って眺望の得られないことと聞いたことがある。
稲垣 真澄 (フリージャーナリスト)