2023年09月01日
Category サンガコラム
1年前、我が家にもついにロボット掃除機が導入された。最初は懐疑的だったが、人の手が届かない子ども部屋のベッド下にすいすいと潜り込んで、埃をキレイに吸い取ってくれたことに感動。無事に家族の信頼を勝ち取ったのだった。
しかし、当たり前だが、掃除機が稼働するためには下準備が必要だ。椅子を持ち上げ、散らばったおもちゃも全部片付けて、「さあ、お通りください」とばかりに、こちらがお膳立てをしてあげる必要がある。せっせと駆け回り、ロボットの通り道を作っていると、もはやどちらが主人なのか分からなくなってしまうことがある。
以前、解剖学者の養老孟司さんが言われていた。「これからは人間を真似したAIやロボットがたくさん出てくるだろうけど、コンピューターが人間に似てくるんじゃないよ。人間がだんだんコンピューターに似てくるんだ」。
確かに、私たちの思考はいつの間にか、スマホ型になってきている。分からないことがあれば24時間、いつでもネットで調べて、曖昧であることが許せない。街でおいしそうなご飯のお店を見つけても、まずはレビューサイトで点数を調べる。感情よりも数字で物事を考えるのが、当たり前になっているのだ。
「心までシステマチックになってはならない」。そんな私の思いはつゆ知らず、今日も忙しくロボット掃除機は走り回る。そして時折、人間くさい失敗などしてくれると、私は少しだけホッとするのだった。
花園 一実
1982年生まれ。圓照寺住職。二児の父親。
『帰り道で話そうよ-マンガで味わうブッダの教え』(東本願寺出版)の原案を担当。