2020年10月09日
Category サンガコラム
やっててよかった、○○式と謳う学習塾に通う勉強嫌いの息子が言う。「 やっててよかった なんて僕は一回も思ったことないし、これからも絶対思わない!」。つまり、単純に塾通いをやめたいということ。親としては、「これまで やっててよかった と思えなかったとしても、今後 やっててよかった と思えるから続けようよ」と励ましてみる。
しかし「 やっててよかったと、後々思えるから」、なんて全く確証ないことを私もよく言えたものだ。コロナウイルス禍と異常気象災害の多発で、私たちにはどうにもならないことがあるという現実を突きつけられた。この世の豊かさや、人々の幸せと思っていた(思い込んでいた)基盤が、こんなにも薄氷を踏むかのような、危うい瞬間の連続で成り立っていたのか、と知らされる。何が「豊かさ」なのか、今までの使い慣れた物差しをどうしたらいいのか、迷ってしまう。
そもそも、自分がこの世に命生まれたからには迷いは生まれてくるし、むしろ迷いが自分そのものなのだろう。塾をやめた子が後々「やっておけばよかった」と思ったとしても、「やめてよかった」と思ったとしても正解はない。思いもしなかった現実の最中で迷うことこそが、人生を彩る豊かさなのだ、と気づかされてくるのならば、やっぱり「やっててよかった!」。
島津 和嘉子(新潟県・長養寺)