親になる、子になる|作家・川上 未映子さん 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2020年12月15日

Category インタビュー

親になる、子になる

作家 川上未映子さん

 自分も含めていつかみんな死ぬ。それが小さい頃からの一大事だった。その不安が、いつも自分のことを後ろから見ているような気がする。振り返るといなくなるが、忘れた頃にまたノックしてくるのである

かわいい=モテという画一化された価値観に反発した。高校のデザイン科へ進学し、金色にした髪には毛糸を編み込み、鉄板入りの安全靴を履いていた。いかに目立つか、より面白いか、そのほうがモテることより断然価値があると思った。

女の子は生まれたときから「女の子らしくしなさい」と言われるんですね。やっぱりお金があったり、地位のある人と結婚できるようにという教育ですよね。ある程度までは自分を出して頑張ってもいいけど、決して男の人より稼がない、学歴もつけないでと言われてきたわけです。だから医科大の、男性に下駄を履かせるということにもなってくる。

 昭和の時代に、スカートめくりが流行ったんです。男の子がスカートをめくるということは、男の子がその女の子を性的な欲望の対象にすることです。そんなの犯罪ですよ、子どもであってもね。でも、それが本当にマヒしていて、欲望されないことが恥ずかしいという逆転の構造が起きる。スカートめくりされると人気があるみたいなね。されない子は自分を惨めに思う。「私には誰も男の子が寄ってこない」ということを、自分をはかる価値の一つとして見てしまう。そんな悲しいことがあったんですね。

 

三十五歳で母親になった。子どもが生まれて、完全に変わったことが二つ。一つは自分と母親との関係、二つ目は夫婦関係である。

 複雑な家庭環境だったので、自分が母を守らなければと思っていたんですね。母が朝から晩まで働いていた。だから、自分が生まれてくる子どもにしてあ…

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