2021年08月05日
Category サンガコラム
長女が3歳の頃、急な高熱で寝込んでしまったことがあった。幸いに熱は2日で下がり、ほっとしたのも束の間、長女の身に一つの変化が。これまで少しずつ積み重ねてできるようになった、着替えやトイレなど身の回りのことが、急に何一つできなくなってしまったのだ。
「この前まで一人でできていたのに、どうして!?」
焦って理由を尋ねても、当の本人は泣くばかり。途方に暮れていた折、ネット上である主婦の方のブログに出会った。「子どもの成長は右肩上がりではなく、らせん状を描く」という内容だった。上から見れば、ぐるぐる同じところを巡っているようだけど、角度を変えれば確かに一歩ずつ上がっている。だから焦らなくていい。「できなくなること」も一つの成長なのだ、と。思えば当時の私は、この視点にずいぶん救われていたような気がする。
人生だって右肩上がりにはできていない。歳を取れば得ることばかりではない。手放すことの方が多くなっていくはずだ。でもそれでいい。良いことも悪いことも含めて、それが今の自分なんだと引き受け、しなやかな弾性を持つバネのように人生のらせんを描いていければ。そんなことを、ひそかに願っている。
花園 一実(東京都台東区・圓照寺)
1982生まれ。圓照寺副住職。2児の父。
『帰り道で話そうよーマンガで味わうブッダの教え』(東本願寺出版)の原案を担当。