2023年11月01日
Category サンガコラム
「二人目はまだ?」「お寺の跡取り産まないとね」。うちは娘ひとりだからか、たまにそう言われることがある。けれど、そう言った言葉で私が傷つくことはないし、跡取りとして男児を産まないといけないというのも多くの女性住職がおられる中、全くピンと来ない。それで相手に対して嫌悪感を抱くこともないし、むしろ私との関係性を深めようと言っていただいているのだろうと嬉しく思い、「頑張ります」と明るく返している。
ハラスメントの問題はとても難しい。どんなに親しい間柄でも、気づかぬうちに相手を傷つけているかもしれない。先の言葉も、もし私に娘が生まれていなかったら、もし不妊治療中だったとしたら、私は明るく返答できただろうか。正直、一日の終りにふと思い出し、心がざわざわっとすることもある。頑張るつもりもないのに、頑張りますと明るく答えなければいけない。これをハラスメントと言うのだろうか。いや、心ある大好きな人たちの慰めや励ましをハラスメントで片付けたくはない。だから、難しい。
私が独身の頃、二人目の子がなかなか授からず「二人目うつ」になってしまった友人がいた。「一人いるんだからいいじゃん」。私は彼女を慰め、励ましたつもりだったけれど、彼女を深く傷つけていたかもしれない。そんなことを思い出していたら、居ても立ってもいられなくなり、その友人にメールで詫びた。すると、「そんなこと言われたっけ?」と返って来た。現在、中学生になる一人息子を愛情深く育てている友人は「私、あの時、変だったから気にしないで」と言ってくれた。私は、心が軽くなったと同時に、彼女は忘れたフリをしてくれたんじゃないかとも思った。
堀江 彩木
諦聴寺坊守。
ねじめ彩木のペンネームにて、数々のテレビドラマの脚本を手掛ける。