真宗会館コラム|下を向いてもいいんだよ 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2019年06月12日

Category サンガコラム

下を向いてもいいんだよ

カメラを持って街に出よう

 少しだけ落ち込むことがあった日の帰り道。雨が上がったばかりの空はどんよりしていて、道端もどこか薄暗い。なおさら気分が滅入るじゃないか、とうつむき加減で歩いた。その時ふと、民家の庭先の草たちが目に入った。決して手入れが行き届いているとは言えない庭の端に、雑草たちがのびのびと葉を伸ばしていた。

 雨の後だからだろうか、その緑がひと際瑞々しく見えた。その葉には雨粒が残り、一つ一つがどこか笑いかけてくれているように見える。私も思わず少し、微笑む。いつも上ばかり向いていては、見落としてしまう足元の草花のささやきがある。「ときどき、下を向いたっていいんだよ」。君たちはいつもそう、教えてくれるね。今日もいつもの道で出会う、何気ない命に感謝を抱く。

 

安田 菜津紀(やすだ・なつき)

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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