2022年08月03日
Category サンガコラム
日本でおなじみのTV番組『はじめてのおつかい』が、海外向けに配信され大反響を呼んだという。けなげに頑張る子どもたちの姿に「とっても、かわいい!」「感動する」といった声が上がる一方、「一人で行かせるなんてありえない!」「誘拐されないの?」など、文化や治安の違いに衝撃を受けたという意見も多く、子どもの見守りについて欧米社会に大論争を巻き起こしたそうだ。
見守りといえば、長女の通う小学校では、校門を通過した瞬間ランドセルにつけたセンサーが反応し、自動で親に通知が届くシステムになっている。聞けば、低学年のうちから携帯やGPSを持たせている家庭も今は多いそうだ。安心を追求しリスクを排除していく時代。だんだん親が子どもの行方を心配し、気を揉む時間も、なくなっていくのかもしれない。それはそれで少し寂しいと思ってしまうのは、やはり贅沢なのだろうか。
ある日、スマホに下校の通知が届いているのに、いつまでも長女が帰ってこないことがあった。私は家を飛び出し、あわてて通学路を探しに行った。長女は歩道の生け垣にしゃがみ込み、友だちと夢中でダンゴムシを観察していた。なんということはない、結局こちらが無駄にヤキモキさせられてしまっただけではないか。苦笑いしながら、楽しげな子どもたちの後ろ姿をこっそり見守っていた。
花園 一実
1982生まれ。圓照寺副住職。二児の父親。
『帰り道で話そうよ-マンガで味わうブッダの教え』(東本願寺出版)の原案を担当。