2019年06月12日
Category サンガコラム
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「如来の摂取不捨(えらばず、きらわず、見すてず)の心を学び、真実、自分自身のしたいこと、しなければならないこと、できることを、他人とくらべず、あせらず、あきらめず、していこう」
ある宗教雑誌に上記の竹中智秀先生(1932-2006)の言葉の一節を書いた。それを読まれた方から手紙をいただいた。その方は、日本生産管理学会に所属しておられ、いろいろな研修の場で企業活動の要として、「したいこと、しなければならないこと、できること」という三つのことが一致する大切さを訴えてきたという。自分が30年来話をしてきたことを仏教も語っていることに驚きもし、喜ばれたという内容だった。
返事に、もう一つの「くらべず、あせらず、あきらめず」の言葉を紹介し、この言葉は、竹中先生のご子息が学校を卒え、いよいよ社会へ巣立っていく時に、先生が著書の表紙裏に「はなむけ」の言葉として書かれたものだといういきさつを記した。
「したいこと、しなければならないこと、できること」は行為の基である。「くらべず、あせらず、あきらめず」は意欲
の源である。
その、いつでも、どこでも、自分が自分らしくあるためには、「えらばず、きらわず、見すてず」の如来の摂取不捨の心に向かって、まず自分の心を開かなければならない。
如来とは、私どもを生かしている“いのち”のはたらきをいう。如来は、「あなたはあなた自身として、ちゃんとそこにいるよ」と、声なき声をもって呼びかけている。
孤野 秀存