2016年06月15日
Category 対談
姜 尚中 氏(東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長)
本多 弘之 氏(親鸞仏教センター所長)
編集 姜さんは親鸞の生きた750年前の日本の宗教改革というのは、西洋で起こったルター、カルバンの宗教改革より500年も先行する先駆的なものだったのではないかということを話されていますね。
姜 親鸞が登場してくる時代と今の時代は、何か似通った部分があるのではないかと考えています。そう考えたのは、私がNHKの『日曜美術館』という番組に出演する経緯にあったアルブレヒト・デューラーの影響があります。
デューラーは、ちょうど1500年に最後の自画像を描いています。16世紀ヨーロッパの内戦の時代に描かれたものですが、初めてそれを見たとき私は20代の終わりでしたが、こころが震えました。自分がどう生きていいか分からない時に、デューラーの内戦の時代をいかに生きるかという眼差しが私に語りかけてきたのです。
今を内戦の時代とは思いませんが、何か16世紀と似通った面があるのではないかと思うのです。どのように生きたらいいかということが分からなくなって、世界中でいろんな騒乱が起きている。おそらく日本ではそういう時代が13世紀の初頭だったと思います。あの鎌倉の時代に法然や親鸞など、世界的にも珍しい稀有な宗教改革者が、なぜ続々と出てきたのでしょうか。
本多 京都を中心にした平安貴族の爛熟期が武士の勃興で大きく壊されて、それまでの価値観が破壊され、それまで無価値と思われたようなものに取って代わられ…