コラム|ちょうちょう社会 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2024年03月01日

Category サンガコラム終活

ちょうちょう社会

老いるについて―野の花診療所の窓から  Vol.76

 

 日本は「少子高齢化社会」を迎えていると言われている。社会は高齢化に拍車をかけている。そんな文脈で「日本は高齢化社会となり」と綴ったら、ある編集部の校正係から指摘された。「65歳以上の人の割合(高齢化率)が7%を越えると高齢化社会、14%を越えると高齢社会、21%を越えると超高齢社会、と定義されているようです」。2023年、日本の高齢化率、29.8%。先の定義によるなら、日本は「超高齢社会」、となる。

 世界はどうなんだろう。ネットって便利。あっという間に世界の高齢化率が表示される。日本は世界2位。1位は? モナコで約36%。飛び抜けている。3位はどこか? イタリアで23.7%。4位はフィンランド22.9%、5位プエルトリコ22.9%。アメリカは?16.8%、移民受け入れによるようだ。ドイツは?21.7%、フランス20.8%。中国は14.2%。今のとこ若い。ウクライナはどうなんだろう、18.8%。高齢社会だ。じゃあロシアは?15.8%、ウクライナより少し若い。TV画面を見る限り若者が多そうなインドは?6.9%。隣国のネパールも6%。戦禍にあるイスラエルが12.2%、で高齢化社会。一方パレスチナは? 何と、3.5%。今回のガザでの1万2千人を越える戦死者のうち4割が子どもたちらしい。高齢になるまで生き延びることのできない社会なのだ。

 パレスチナで保健医療活動をしていた清田明宏さんによると「一番多い病気は糖尿病」(※)。野菜や肉は高くて買えない。一番安いパン(ピタ)で空腹を満たし、たくさん食べ太る。散歩道や公園は少なく、多くが運動不足。完全な生活習慣病。政治が作る病気、と知る。高齢化率が低い国がカンボジア5.8%、シリア4.7%、ルワンダ3.2%、アフガニスタン2.6%。大量虐殺や内戦、戦禍にある国々だ。日本も1950年は4.9%だった。敗戦後だった。2005年に20%となる。そこから高齢化が進んでいく。7という数字で高齢化のステージを分類するなら、28%を過ぎた日本は「超々高齢社会」と呼ばねばなるまい。簡略すると、ちょうちょう社会。

(※)『天井のない監獄 ガザの声を聴け!』2019年、集英社新書__

 

 

 

 

徳永 進 (医師)
1948年鳥取県生まれ。京都大学医学部卒業。鳥取赤十字病院内科部長を経て、01年、鳥取市内にホスピスケアを行う「野の花診療所」を開設。82年『死の中の笑み』で講談社ノンフィクション賞、92年、地域医療への貢献を認められ第1回若月賞を受賞。著書に、『老いるもよし』『死の文化を豊かに』『「いのち」の現場でとまどう』『看取るあなたへ』(共著)など多数。

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