死者と繋がり続けたいという思い|サンガコラム「レンズの奥の瞳」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2022年04月08日

Category サンガコラム

死者と繋がり続けたいという思い

レンズの奥の瞳 vol.9

汐凪さんのものと思われる遺骨を愛おしそうに撫でる木村さん。

 

※今回の写真は動画の切り出しを使用しています

 木村紀夫さん一家は福島県大熊町の沿岸に暮らしていた。2011年3月11日の津波により、木村さんの娘、汐凪さん、妻の深雪さん、父の王太朗さんが行方不明となる。妻と父の遺体はその後発見されるが、汐凪さんの遺骨の一部が見つかったのは、それから5年9か月後のことだった。

 そして時がたち今年2022年1月、長年沖縄で戦没者遺骨の捜索を続けてきた具志堅隆松さんが、原発事故により帰還困難区域となっている木村さんの自宅周辺を訪れ、ともに汐凪さんの遺骨を捜索。奇跡的に汐凪さんのものと思われる大腿骨が見つかった。「父と娘が、呼び合った結果だと思います」と具志堅さんは言う。木村さんは、こびりついた土を指でそぎ落しながら、何度も、何度も、愛おしそうに遺骨を撫でる。

 亡くなった人と繋がり続けたいという思いは、決して目に映るものでも、数値化できるものでもないが、この社会を支える欠かせない土台なのだと、その姿が物語っていた。

 

 

佐藤 慧( フォトジャーナリスト/ライター)

1982年岩手県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト、ライター。同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第二回児童文芸ノンフィクション文学賞など受賞。東京都在住。

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