楕円の夢…|音楽家・文筆家 寺尾 紗穂さん 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2020年09月25日

Category インタビュー

楕円の夢…

音楽家・文筆家 寺尾 紗穂さん

 音楽活動とともに、エッセイストとして多くの言葉、テーマ性をもった作品を世に送り出してきた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企画していた東京・山谷の玉姫公園での音楽フェスが中止に。音楽家として、配信を並行しながらも、皆が同じ空気を共有し、感じ合うことのできるライブにこだわりを持ち続ける。

寺尾さんに「楕円の夢」という曲がある。尾崎翠という作家を追いかけていたときに花田清輝の「楕円幻想」を知る。終戦直後に出版された『復興期の精神』に収録されているエッセイで、戦後という転換期を、生か死か、科学か信仰かという、二項対立な真円的思考ではなく、二つの焦点を持つ楕円に擬して考えようとしたものである。同時に寺尾さんは、高校の地学のケプラーの楕円を思い出していた。

 それまでのキリスト教世界では、惑星は真円の軌道を描いているはずだという考え方でした。神さまがつくった宇宙というものは半端な部分はなくて、みんなきれいな円でできているもの、美しいものだという考えです。でも、ケプラーがたくさんのデータをもとに惑星の軌道を割り出してみると、どうもそれは楕円であることがわかった。もちろん地球も、太陽の周りを楕円で回っている。一見、完全な円に見えるけれども、ちょっとはみ出すのが現実だったんです。なにかその幅、その余白のある感じが、実はとても大切なのではと思いました。

 人は何か問題を抱えたり、追い込まれてしまったりするときには、どうしても考え方が狭くなってしまうんですね。だけど、何かのきっかけで、自分をちょっと離れたところから見ることができたとすれば、そんなに辛いことばかりではないんじゃないかなって。そういうふうに1じゃなくて、もうひとつ別の足場をつくることができたら、たぶんすっと心が生きやすくなると思うんです。

 だからその1だけにこだわらないで、もうちょっとたくさんの答えを探してみる、…

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