鈍麻した心に油を注す|サンガコラム「レンズの奥の瞳」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2021年06月10日

Category サンガコラム

鈍麻した心に油を注す

レンズの奥の瞳

イラク北部クルド自治区の首都、アルビルで出会った子どもたち。

 イラク北部クルド自治区。ここには主に、「世界最大の少数民族」とも呼ばれるクルド人たちが居住している。クルド人とは、第一次世界大戦後、オスマン帝国の解体に伴い、列強の恣意的に引いた国境線により分断され、現在は複数の国境にまたがり暮らす人々だ。独自の言語・文化・歴史を持つ集団ではあるが、自分たちの国を持つことは叶わず、それぞれの国で「少数民族」として暮らしている。

 「クルド人が殺されても、世界は見向きもしないんだ」と、現地の友人は語る。これまでにも、イラクのフセイン政権が指揮した化学兵器による殺戮や、トルコ国内での虐殺、イランでの人権侵害、そしてシリアではクルド人を狙った侵略戦争などが起こっており、日本では「戦後」と呼ばれる現在も、平和が訪れる兆しは見えない。

 しかしそんな戦禍の合間にも、人々は毎日を積み重ね、日々を送る。笑い、泣き、友と語り合い、恋をする。そんな人々の日常は、ニュースでは語られず、新聞の一面に載ることもない。でも、だからこそではないだろうか。遠い島国である日本に暮らしていると、今そこで起きている戦争を、「どこか遠い国の戦争」だと捉え、リアルな痛みを感じにくい。これだけ情報が溢れていても、何か大切なものが欠けてしまっているのではないだろうか。

 そんな鈍麻した心に油を注すように、シャッターを切る。目の前にいる人々は、単なる「情報」などではない、それぞれの命を生きる、かけがえのないひとりの人間なのだと。誰もが僕たちと同じように、大切な人々の幸せを願い、平和を求めているのだと。

 

 

佐藤 …

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