2020年04月07日
Category サンガコラム
カメラを持って街に出よう
岩手県大船渡市小石浜。険しい岸壁の上にも、ハマギクはそっと咲いている。
岩手県の海辺で、時折見かける花がある。冷たい風にも動じず、静かに海を見守るその出で立ちに心惹かれ、これまで何度もシャッターを切ってきた。地元の漁師さんたちが、その花の名前は「ハマギク」だと教えてくれた。花言葉は、「逆境に立ち向かう」だ。
東日本大震災から9年という月日が経つ。いまだ仮設住宅での暮らしを余儀なくされている人、生活の再建に苦しむ人たちがいる。それでも街が少しずつ息を吹き返してきたのは、災害という「逆境に立ち向かう」地元の人たちの存在があってこそだったろう。ただ、こうして歯を食いしばってきた人たちほど、弱音を吐けず、休んだり寄りかかったりすることができなかったのではないだろうか。ハマギクのもう一つの花言葉は「友愛」だ。「時には立ち止まっていいんだよ」と、今改めて声をかけ合いたい。
安田 菜津紀 (フォトジャーナリスト)
1987年神奈川県生まれ。Dialogue forPeople(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。