真宗会館コラム|ちむぐりさの心 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2019年02月06日

Category サンガコラム

「ちむぐりさ」の心

カメラを持って街に出よう

 まだ夏の暑さがじわりと残る沖縄県、国頭郡東村。途中で車両が通行止めとなっていたため、高江までの道のりを歩いて進むことにした。なだらかながら延々と続く坂道を前に、とめどなく噴き出してくる汗をぬぐい、思わず立ち止まりそうになる。ふと足元を見ると、小さな花々や虫たち、そこは命でいっぱいだった。ぼろぼろの羽で、それでも風の中を舞うように飛び交う蝶たちを見ながら、その姿が今の沖縄の姿に重なった。
 沖縄ご出身の方に、「ちむぐりさ」という言葉を教えてもらったことがある。「肝苦りさ」と書く。単純な「かわいそう」、「たいへんね」、ではなく、「あなたが悲しいと、私も悲しい」という共感の言葉なのだそうだ。
 浮かび上がり続ける蝶を見ながら、思う。私たちに今「ちむぐりさ」の心は、足りているだろうか。

 

安田 菜津紀(やすだ・なつき)

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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