2016年06月15日
Category 法話
法話:「人は皆、誰もが、道を求めている」
真宗会館のつどい
酒井 義一 氏(東京都・存明寺住職)
真宗会館は、人間が生きていくことを学ぶ場所です。どういうご縁で今日は真宗会館にこられましたか。この場所へ来られるまでには一人ひとりのそれぞれの歴史があります。今日まで歩いてきた人生があります。そのことに敬いを込めて皆様をお迎えしようと思っています。
ある方から正直に真宗会館に来るようになった理由を聞いたことがあります。定年を迎えた時にはドライブを沢山しようと決めていたそうです。けれども、「ドライブは飽きるんです」とおっしゃいました。とても印象的でした。温泉旅行、釣り、映画などなど楽しいと思うことは人それぞれです。しかし、人間はその楽しいことだけで満足できるほど安っぽいものではありません。本当に生涯をかけて、明らかにしなければならない「深いもの」に触れなければ、「いのち」が満足するということはあり得ません。それが「人は皆、誰もが、道を求めている」ということなのです。確かなものに「出会いたい」という証なのです。
私は北海道にご縁がありまして、日高地方のコンブ漁師の方と出会いました。その方はコンブ漁師が嫌で嫌で、若い頃に東京へ出て本当に自分の好きなことをやりながら過したそうです。しかし時が経つにつれ、その方は「楽しいけれども、もういい」と思われたのだそうです。何かが足りない。もうこんな生活はいいと、北海道へ帰りコンブ漁師になったそうです。そしてこうおっしゃいました。
「私も63歳になった。両親を見送って、子育てが終わり、私の人生もあと20年。何の意味があったのだろうか」と。私は、その方に人間は意味を明ら…