旭山動物園|サンガコラム「小窓のあかり」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2022年12月04日

Category サンガコラム

旭山動物園

小窓のあかりVol.37

 日本でも屈指の来園者数を誇る旭山動物園(北海道旭川市)。家族で訪れるのは、今年の夏で二度目になる。前回訪れた時はまだ2歳だった長女も、今や9歳。文字も読めるようになり、飼育員さん手書きの解説を一つ一つじっくり読んで回るから、なかなか先へ進めない。

 ここには特段、珍しい動物がいるわけではない。それでもここまで有名になったのは、「行動展示」と呼ばれる、その展示の仕方にある。例えばペンギンは水中から観察できるように工夫してあり、陸とは全く違う、飛ぶように素早く泳げる一面を見ることができる。警戒心の強いヒョウを真下から見上げれば、驚くほどリラックスしている。これは高い位置にいることで人間より優位に立っていられるからだ。徹底して動物の目線に立ち、習性を理解し、のびのびと暮らせる環境を用意すれば、そこに動物本来のダイナミックさが自ずと引き出されていく。特別な芸は必要ないのだ。園長の坂東元さんは言う。

 本来、生き物やいのちが「飽きられる」ことなんてないはずです。いや、あってはいけない。でも、私たちの社会は「飽きる」ことで成り立っています。まだ使えるのに「飽きた」から買い替える。そうしないと経済は成り立ちません。(中略)動物園もその価値観の中にいたのです。

 『ヒトと生き物 ひとつながりのいのち 旭山動物園からのメッセージ』

 何とも耳が痛い。物も話題も、目新しさばかりが注目される世の中。乗り遅れないよう今日も躍起になっている。「ただ、生きている」、本当はそれだけで何にも代え難いはずなのに。あの動物たちは、こんな私をどう見ているだろうか。

 

 

花園 一実

1982年生まれ。圓照寺副住職。二児の父親。
帰り道で話そうよ-マンガで味わうブッダの教え』(東本願寺出版)の原案を担当。

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