2020年05月29日

Category インタビュー

いのちをつなぐ

放送作家・鈴木おさむさん

会った瞬間に結婚をひらめき、事実上〈交際期間0日〉でプロポーズ。電撃結婚し、世間を驚かせた。結婚13年目に子どもを授かった。「笑うかどには福きたる」から、笑福と名づけた。1年間メインの仕事である放送作家業を休み、「父勉(父親になるための勉強)」として、育児に向き合った。

 父が亡くなって一周忌が過ぎた。葬儀、四十九日の法要、初盆と、仏事を通して、父の死を受けとめている自分の変化に気がついた。

 父が亡くなって、1年たって、やっぱり自然と忘れていくということもありますが、思い出として、亡くなった人は人の心に住むということを本当に実感しました。
 亡くなる2週間前に父と一対一で話す機会があったんです。前に1回、病気の告知をされたあと、時計をプレゼントして、手紙を書いて、それまで言えなかったことを全部書いて感謝の気持ちを伝えたことがあったんです。それに対しての父の言葉でもあったのでしょう。父は病床で起き上がって、ぼくの名前を呼んで、「今までいろいろなことで迷惑をかけちゃったけど、本当にありがとうございました」と敬語で頭を下げたんですね。そして母の名前と姉と姉の息子の名前、ぼくの妻と息子の名前を言って「これからもよろしくお願いします」と言ったんです。ぼくは長男なので、なるほどこれが家督を継ぐということなのかと思いました。丁寧な言葉で「よろしくお願いします」と言った父の姿はすてきでした。
 病室を出たら、父の前では我慢していた涙がどっとあふれました。エレベーターに乗って、泣きながら降りたんです。妻たちの車に乗ったら息子が「とうと、なんで泣いてんの」と言うんです。

 

 

 家族が3人、どんなことが起こっても、一緒に泣いて、一緒に怒って、そのあと一緒にまた笑って生きていきたいと思う。

 ぼくの姉に2人の子どもがいて、下の子は妊娠7か月で生まれてすぐに大手術をして、いま18 歳なんですけど、しゃべることは出来ません。姉はすごく明るい人なんですが、ふと、この子は生まれてから一度も「おめでとう」と言われたことがないんだよね、と言ったことがあるんです。やっぱり生きるか死ぬかで生まれてきて、その後に障害が残りますと言われたときに、「おめでとう」と言いにくいですよね。
 笑福が2歳くらいになって、歩くことやしゃべり始める時期をついつい人と比べてしまっていました。そんな時、姉からLINEが来て、「息子が今日15歳で、初めて一人でトイレでうんちができたんだ。うれしくて泣いっちゃた」って。その嬉しさを伝えたくて、ぼくにLINEしてきたんです。その子にとっては、そのスピードが最適で、それを幸せと感じて、喜んでいる親がいる。子どもは、親の期待のために生きているわけではないと思います。だから、その子に合った環境とか、その子に合ったスピードを親が見極めてあげるのが、親の一番の仕事なのかなと思っています。
 仕事のことしか考えていなかったぼくが、妻と結婚して、人を愛することを教わり、子どもを授かりました。当たり前なんてない。目の前にある日常、小さな幸せ、当たり前だと思っていることが一瞬にして壊れることもある。だから目の前の当たり前に感謝して生きたい。育児というのは、いのちをつなぐことだと思います。

 

すずき・おさむ

1972年、千葉県生まれ。放送作家。妻は森三中の大島美幸。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。ドラマ・映画の脚本や演出・監督の他、ラジオパーソナリティなどでも活躍。2002年に結婚し、15年に待望の第一子を授かる。「『いい夫婦の日』パートナー・オブ・ザ・イヤー2009」受賞。主な著書に『美幸』『ブスの瞳に恋してる』『ママにはなれないパパ』など。

 

Information

 

 

 

 

 

 

『ママにはなれないパパ』(マガジンハウス)
鈴木おさむ 著
定価:1,430円(税込み)

 

 

撮影:児玉成一  

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