たしかに存在したひとつの命|サンガコラム「レンズの奥の瞳」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2022年06月11日

Category サンガコラム

たしかに存在したひとつの命

レンズの奥の瞳 vol.10

戦争で戸籍が消失し、名前のわからない犠牲者も多いという。

 24万人―。その数を想像できるだろうか。1945年当時、「鉄の暴風」と形容される猛烈な艦砲射撃や空襲が、沖縄に降り注いだ。熾烈な地上戦や強制集団死(集団自決)、数えきれないほどの悲劇が繰り返され、老若男女を問わず多くの命が奪われることとなった。読谷村波平のチビチリガマでは、〝鬼畜〞と喧伝されていた米兵の仕打ちを恐れて、肉親同士が殺し合わなければならなかった。本島南部の激戦地では、いまだ遺骨が収集されていない犠牲者も多い。沖縄県平和祈念公園には、「平和の礎」が並んでいる。国籍などを問わず、沖縄戦などで亡くなられたすべての人々の氏名を刻んだ記念碑だ。いまだに毎年追加刻銘は増えており、現在は24万人以上の名前が刻まれている。あたたかな風がシロツメクサの葉を揺らす中、石碑に並ぶ氏名に思いを馳せる。姿かたちも、その瞳も窺い知ることはできないが、そこにはたしかに、ひとつの命があったのだ。

 

 

佐藤 慧( フォトジャーナリスト/ライター)

1982年岩手県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト、ライター。同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第二回児童文芸ノンフィクション文学賞など受賞。東京都在住。

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