2020年02月18日
Category サンガコラム
カメラを持って街に出よう
今帰仁(なきじん)城跡の桜には、人々だけではなく、生き物たちが集う
辺野古へ向かう県道は絶えず、巨大なダンプが行きかい、物々しい気配に覆われていた。高台から見下ろす海には重機を載せた巨大な船が何隻も浮かび、波音よりも大きな鋭い槌音が響いてくる。「時々、ウミガメが泳いでいるのが見えるはずなんだけどね」と地元のお母さんが目を細めて水面を見つめた。その視線の先に、生き物の気配はなかった。
沖縄は一足早く、花咲く春を迎える。満開のコスモスが道端を彩り、丘の上では桜がいっぱい
に花びらを開いていた。そんな瑞々しい命の輝きを前に、立ち止まってシャッターを切る人々の顔はほころんでいた。この日、沖縄県内を案内して下さった方がふと、つぶやいた。「基地があるより、花が咲いている方がいいね」、と。
安田 菜津紀 (フォトジャーナリスト)
1987年神奈川県生まれ。Dialogue forPeople(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。