2020年06月02日
Category サンガコラム
神奈川県横須賀市、猿島。手を携えながら、暗闇を抜ける。
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で今、不安が広がっている。先行きが見えず、不確かなことが多すぎる事態を前に、どんな言葉を紡ぐべきなのか、私も探しあぐねてしまうことがある。そんな時、私はイラク人の友人の言葉を思い浮かべるようにしている。彼はイラクの中では少数派のキリスト教徒で、信仰に厚く、それ故に迫害を受け、隣国へと逃れた。今はフランスで、家族と共に暮らしている。過酷な道のりを歩んできた彼は、いつも穏やかな口調でこう語っていた。「月のない夜には、明かりを頼ればいい。明かりがなければ、蝋燭を灯せばいい。蝋燭がなければ、暗闇に目が慣れるまで待とう。やがて、太陽が昇り、光に包まれるだろう」。
この言葉が今、日本や世界の至るところで夜を越えようとする人々を、優しく包んでいきますように。
安田 菜津紀 (フォトジャーナリスト)
1987年神奈川県生まれ。Dialogue forPeople(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。