2021年06月10日
Category サンガコラム終活
95歳のおばあさんが寝ている。介護用ベッドに寝ている。顔色が悪い、とデイサービスで言われ、CTを撮ったら胸に水が溜まっていて、診療所のカンファランスルームを模様替えして、そこに寝ている。おしっこもよく出て、少し元気になったのに、左足の踵の床ずれが大きくなる。3か月前、直径5㎝だったのに、10㎝大になった。黒っぽくなり、鋏で切り取らないと、だんだん腐っていく。ぷーんと臭う。鋏で切り取っていく。踵の骨が出てくる。痛いので、足が時々宙へ動く。
家族は「齢が齢ですし、治らんもんは治らんでしょう」と決心されている。かと思うと「ペースメーカー、どうしましょう。そろそろ電池交換のころです」と。昔から診ている患者さん、90歳のころ心臓の調子が悪く、総合病院でペースメーカーの植え込みをしてもらった。何回か電池交換の時が来て、その都度、「これでお終いということにしましょうか」、と話し合った。その問題がまた登場。「どうしましょうね」と返す。95歳のおばあさんは元々はしっかりされていて、家事も、町内の集まりも、そのあとの食事会も先頭に立って切り盛りしてた。10年前からアルツハイマー型認知症。ほとんどしゃべらなくなり、ほぼ、寝たきり。ペースメーカーに関心はない。
大変な問題、難しい問題は人生に一回だけ、ということはない。何回も何回も生まれる。若い時にも、中年でも、老年でも、超高齢となっても何回も。
95歳のおばあさん、いつも舌をペロッと出す。パクリッと引っ込…