2020年02月12日
Category インタビュー
キネマ旬報日本映画の第1位になるなど、国内外で高い評価を受けた『この世界の片隅に』が、主人公すずや周作、リンの心の秘密を描いて深みを増して帰ってきた。のんさんがすずの声となって、映画を観る人の心に住み着いて離れない。
【広島県・呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく】戦争を直接描くのではなく、人々の日常を丁寧に描くことによって、「この世界の日常は、すずさんの世界と地続きなんだ」(パーソナリティ・荻上チキ)、「なんでもない日、なんでもない人、なんでもない場所がほんとうに大切に描かれていた」(コピーライター・糸井重里)と絶賛された。
今までは戦争ものとか、その時代の作品を見るのがすごく怖くて、目を背けていた部分があったんです。自分の中でも考えようとしてこなかった部分でもありました。
すずさんが過ごしてきた時代の日本というのが何か別次元の世界、実感のないものだったんですけど、この作品は戦時下の日常にフォーカスされていて、生活を営んでいく部分が丁寧に描かれていました。ご飯をおいしいと思ったとか、まずいと思ったりとか、なんかキャラメルを食べて幸せになったりとか、そういう感覚ですね。時代的に違うというものはあるかもしれないけれども、あっ、そうか、すずさんが生きていると感じたときに、突然別次元だと思っていた世界の人たちに血が通って。あ、これは自分が生きていた日本での出来事だったんだということが、ちゃんと自分の中にすとんと入ってきた感じがありました。だから目を背けていたところから、ちゃんと深いところで、本当に怖いなという気持ちが芽生えてきたんですね。
【ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるもの…