BCからACへ|サンガコラム「タイムライン」 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2020年07月30日

Category サンガコラム終活

BCからACへ

タイムラインVo.23

 BC、ACという言葉まで使われている。むろんBC(西暦紀元前)、AD(紀元後)をなぞったもので、ビフォー・コロナとアフター・コロナ。つまりコロナ・パンデミックの以前と以後とで世界はまるで異なるものになってしまった、という強調である。

 たしかに日常生活のはしばしを振り返って見ても、わずか半月余りの短期間とはいえ、いったん強いられて身につけた習慣が、今後そんなに簡単に捨てられ、再び以前のBC時代に戻るとは、とうてい考えにくい。

 早い話、マスクや手洗いはそれ自体が衛生的だし、テレワーク(在宅勤務)や時差出勤もそれが可能なら否定する理由はなにもない。三密回避や宴席注意だって、従来の過密や、箸さえつけぬ食品ロスの方がむしろ常軌を逸していたのではないか。「新しい生活様式」などと大げさにいわれたくはないが、これを機に変わってほしい習慣も少なくない。

 そうした変化の一つ一つを足し算してみると、総和はいかにも大きい。その驚きが、ACという言葉にはこめられていよう。しかしフードデリバリーが、出前というかつて当たり前だったものの再現・拡張であるように、「新しい生活様式」といっても全く新しいものはほとんど見当たらない。

 その意味でACはBCと地続きのはずである。なのにそこに巨大な断絶、深い空隙を見てしまうのは、結局は踏むべき大地もなく、宙吊りである己の姿を、コロナが有無なく直視させてくれたからだろう。だからなのか、毎年変わらぬ季節の花々が、今年はひときわ鮮やかに見える。

 

 

 

稲垣 真澄 (フリージャーナリスト)

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