一汁一菜という生き方|料理研究家 土井 善晴さん 真宗大谷派(東本願寺)真宗会館

2021年10月05日

Category インタビュー

一汁一菜という生き方

料理研究家 土井 善晴さん

「一汁一菜でよいという提案」(2016年)をした土井さん。一汁一菜とは、汁飯香(ごはん、みそ汁、漬け物)という必要にして最低限の食のスタイルだ。以後 日本の伝統的な食の知恵を知れば知るほど、日本の家庭料理の最善の道だと確信したという。

 ユネスコの無形文化遺産に登録された和食だが、裏を返せば絶滅危惧種ということであり、「寿司や天ぷら、料理屋の懐石料理が世界で評価されても、家庭料理を失った食文化なんて薄っぺらいものです」と土井さんは言う。

 私の考える料理とは、人間が生きていくを原点としています。その原点が一汁一菜です。ご飯と味噌汁、それに漬物(菜)でよいのです。そこに余裕があれば、時々の楽しみにおかずを一品添える。自分で漬けた漬物がなければ、ご飯と具沢山の味噌汁だけでもいい。具沢山の味噌汁がおかずを兼ねますから。和食文化の米と味噌は私たちのいのちを支える要になります。味噌は微生物が作り出すものであり、人工的なおいしさとは別物です。一汁一菜には、豊かな自然と結び、人間が平和に健全に生きていく思想があるのです。

 自然破壊がもたらしたといわれるコロナ禍や地球規模の異常気象によって、皆が地球滅亡の危機を肌で感じるようになり、ようやく資本主義を疑いはじめました。経済成長やテクノロジーの進化と引き換えに、日本は多くの大切なものを失ったように思います。これからの時代をどう生きていくのかは誰もが抱える大きな問題であり、子どもの未来を思うと、いても立ってもいられない気持ちになるでしょう。一人ひとりの小さな人間に、何ができるのか。その答えが一汁一菜だと思うのです。小さな命の集まりが、地球という大きな命をつくっているのですから。

 

 脳が喜ぶおいしさと身体が喜ぶおいしさとは別だと土井さんは言う。
「あまり脳を信じてはいけない、そもそも自分の…

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