2021年10月05日

Category サンガコラム

憎しみの連鎖を断ち切る

レンズの奥の瞳

農村の青年教育にも携わる弁護士、ゼキト・オリベイラ氏。

 パレスチナ自治区、ガザ。海と壁に囲まれた小さな土地は、「天井のない監獄」とも呼ばれている。

 「私たちはただ、日常を返して欲しいのです」と、ガザに住むサディアさんは語る。骨組みだけとなった建物は、2014年のイスラエルによる攻撃で破壊されたサディアさんの店だった。

 地中海に面した入江は外の世界へと開かれているように見えるが、数キロ以上船をこぎ出すと、イスラエル軍に撃たれてしまい、出入りはおろか、まともな漁もできない。「あいつらはテロリストだから」と、イスラエルで出会った若者は言う。だから殺されても、仕方ないのだと。パレスチナ人によるイスラエル国内でのテロは、たしかに存在する。しかし、その犠牲者の何倍もの人々が、これまでにも、そして今も、イスラエル軍により殺され、自由な移動の権利も阻まれたまま暮らしていることを無視することはできない。

 「本当に恐ろしいのは目に見える壁じゃないわ。人間の心の中にある見えない壁こそが、分断を生み続けているの」と、ガザに住む友人が呟いた。その壁は、パレスチナで起きていることなど「遠くの国のできごと」だと思ってしまう、僕らの心の中にこそあるのではないだろうか。

 

 

佐藤 慧( フォトジャーナリスト/ライター)
1982年岩手県生まれ。NPO法人Dialogue for P e ople(ダイアローグフォーピープル/D4P)所属フォトジャーナリスト、ライター。
同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍-人種-宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第二回児童文芸ノンフィクション文学賞など受賞。東京都在住。

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