2021年02月18日
Category サンガコラム終活
新訳の『老人と海』(ヘミングウェイ・高見浩訳・新潮文庫)を読んだ。文庫で約130頁の短編小説。心にいくつかのことが残る。
老人は84歳漁師サンチアゴ、少年は5歳で老人に漁を教えてもらったマノーリン。場所はメキシコ湾、キューバ・コヒマル。老人は84日間も不漁で、少年は他の舟に乗るよう親に言われている。でも二人の心の絆は強い。
老人は一人で夜明け海にでる。85日目、大物がかかる。格闘が始まる。魚は舟を沖へと引っ張る。老人は釣れたシイラや飛び魚やマグロを切り身にして食べ、体力を保持する。ロープは手に食い込み、肩に食い込む。手は傷だらけ。手漕ぎ舟の上で足を踏んばり、前へ後ろへと移動する。闘いは一日以上に及ぶ。老人の中に隠れていた老人力がじわりと甦る。魚影が海中に姿を見せる。夜空にリゲル星が光る。死闘は続く。老人は呟く。「あれほどの魚は見たこともない。なのに、やつを殺さにゃならん。だが、あの星たちは、嬉しいことに、殺さなくてもいいのだ」。老人は何度も少年マノーリンのことを思い出す。「あの子がいりゃいいんだが。手伝ってもらえるし、この一部始終を見せてやれよう」。「あいつがいたら、ここで珈琲を一口飲めて、ここでひと眠りできるだろうに」。老人にとって少年は兄弟のようで、友人のようで、恋人のようだ。
手鉤や銛やナイフで暴れる魚に止めを刺し、舟に縛りつけた。大魚は5.5mのマカジキ。このまま無事に浜に戻れたら少年も村民も老人を称えたのだが、そうはならなかった。血の匂いを嗅いで何匹ものサメが襲ってきた。成功後にも続く第2の死…