2019年02月14日

Category サンガコラム

それでも芽吹く、小さな命

カメラを持って街に出よう

 日本大震災から間もなく、8年という月日が経とうとしている。発災後、私が真っ先に向かったのは、岩手県陸前高田市だった。あの当時、夫の両親がこの街に暮らしていたからだ。累々とどこまでも積み重なる瓦礫を前に、ただ茫然と立ち尽くした。義理の父は病院の4階で何とか一命をとりとめたものの、義理の母は一か月後、河口から9キロ近く上流の川辺で発見された。大地は見渡す限り、褐色だった。

 そんな厳しい冬を乗り越え、やがてぽつり、ぽつりと、瓦礫の間から緑が生え出しているのが目にとまるようになった。あれだけの大津波に襲われても、大地に眠る命は再び息を吹き返していた。そして、気が付いた。これまで目にしてきた足元の草木は 当たり前 にそこにあるのではなく、日常の中のかけがえのない宝物だったのだ、と。

 

安田 菜津紀(やすだ・なつき)

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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